短篇小説・・・ オモイツクママ


  ◆短編小説・・・
正面衝突【n10】


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  正面衝突-A 「運命」

 今朝、新聞の記事を見て僕は愕然(がくぜん)とした。
「乗用車とトラック正面衝突、老夫婦死亡」。

 昨日、中央環状線上り追い越し車線を逆行して走っていた乗用車に大型トラックが正面衝突大破した。乗用車を運転していたAさん(74)と同乗の妻Bさん(64)は病院に運ばれたが死亡、トラックのCさん(44)は重症という。
この記事に、僕は不思議な「運命」を感じた。

 あれは一週間前の事である。
同じ場所で僕の運転する車が追い越し車線を逆行してくる乗用車を発見。正面衝突を避けて左走行車線に回避したことを。そして何事も無くすれちがった。
しかし、その時の窓越しに見た老夫婦の驚愕(きょうがく)の顔をいまだに忘れられない。
「すれ違ったときに一瞬、自分の姿を見たような気がした・・・」

 その同じ場所で後日、トラックとの衝突事故が起ったのである。
広い分離帯を挟んでの下り車線があり、交差点で車が途切れた時、誤って進入禁止の標識を見落として上り車線を逆行したようである。
この場所での老夫婦の衝突事故は避けられない「運命」であったのだろうか。
最初に僕が衝突を避けた為に何事も無かったが、再び現実に事故は起ったのである。

 事故の後、再び僕は同じ道路を走る事になった。
お昼前の交通量が少ない時間帯で、前を走っている大型トラックを追い越した。そのまま追い越し車線でスピードを上げて走っていた。
そのとき我が目を疑った。前方から車がこちらに向かって走ってくるではないか。警笛を鳴らすと共に急ブレーキを踏む。
衝突寸前に僕を見つめる、驚いた顔の人がはっきりと。白髪混じりの人がハンドルを握り、その横の助手席には奥さんと思しき人がこちらを凝視している。

「あっ 」と思った瞬間、そのまま正面の車に・・・・通り過ぎて止まった。
衝突した車は・・・・どこにも無かった。そして自分の車にも何の損傷も無い。
路上に止まった自分の車を先程のトラックが僕の左を追い抜いていく。
運転席の窓から此方をにらみつけるようにして・・・・。今のは一体何なのだろう・・・・・・。

 その後もこの事故現場では今回のように不思議な車の影を見かけたという噂話があったが段々とその影は薄れて行き、今はまったく見られないと言う。
 皆さんは、もう安心して走行して下さい。 
(この物語はフィクションです)

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