短篇小説・・・ オモイツクママ


  ◆短編小説・・・
幽体離脱【n4】


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  ●安倍清明神社

  阿倍晴明 @

 大阪市内、阿倍野区の「熊野かいどう」沿いに安倍晴明神社があります。 ここは、かの有名な陰陽師 安倍晴明が誕生した土地だと云われています。
 晴明の父親、安倍保名が信太森葛葉稲荷神社にお参りしていたとき、狩人に追われていた白狐をかくまい助けたそうです。
 白狐はその後、人間の女性になって「葛の葉」と名のり保名と結婚、出来た子供が晴明。しかし清明が幼い時に自分が人間で無く狐だということが知られ、子供を置いて「しのだの森」に帰っていきます。   

「恋しくば たずね来てみよ 和泉なる しのだの森の うらみ葛の葉」
幼い子供を手放して去らねばならない母親の悲しみが良く表されて心に残る句です。
平安時代には和泉式部が
「秋風のすこし吹くとも葛の葉のうらみがほにはみえじととぞおもふ」
江戸時代にも松尾芭蕉も、
「葛の葉のおもて見せけり今朝の霜」の句を残しています。
「葛の葉の子別れ」として浄瑠璃や歌舞伎でも上演されています。
晴明は子供の頃から白狐の霊力に恵まれその後、朝廷や公家の保護の下、陰陽師として京の都に入る鬼を防ぎ活躍しました。

 葛の葉は3枚に分かれ、裏側は白く風に吹かれて見えるところから、平安時代には「裏見」と「恨み」に掛けた掛け言葉として使われていたようです。
信太森葛葉稲荷神社の紋章は3枚の葉のうち1枚の葛の葉が裏を見せています。「うらみ葛の葉」として使われています。

 余談ですが葛は秋の七草のひとつであり、生命力が強く何処にでも自生し根に含まれるでんぷんは古来から食用として用いられている。 葛餅、葛きり、葛粉を溶いた葛湯は冬場には私も時々呑んでいます。特に奈良県吉野の葛は大変美味しい。
 
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       葛の花(山中渓にて 9/14 撮影)
 

  阿倍晴明 A

 時々自分の体ひとつで、空を飛ぶ「夢」を見るのです。
寝ている体は金縛りにあったように動けなくなり、体全体がふわっと空を飛ぶのです、水の中を足でかいて歩くように。
道を少し駆け足で道路を走ってそのまま空中に。そのままふわふわと歩くのです。
 最初はなかなか高く飛べなかったのですが、その内に屋根の高さまでそして屋根の上をけって、もっと高くまで上れるようになりました。
上から下を見ると小さな長屋がうねうねと曲がった細い道に沿って並んでいます。
空には何も無いので両手両足で空気を書くようにして歩きますがそのうちだんだん高度が落ち道に降り立ちます。
 いつも見るのは過去の古い町並みです。このとき私の心、魂の実体はここにあるのだろうか。これを幽体離脱というのでしょうか。

 あるときもっと高く飛ぼうと、空中でもがいている時、下を見るとお供を連れた人が歩いています。僕は異界の者、月に薄雲がかかり見えないだろうとそっと近づく。
「何か異形のものを感じる」一人の男がつぶやいた。「闇の世界のものか!」
 男が何か呪文のようなものを唱えると僕の体が自由を失い飛べなくなり地面に落下。
 危険を感じて物陰に隠れようとすると、紙札のようなものが彼の手から投げられると生き物のように、いっせいにこちらに向かって襲って来るではないか。
右手で払いのけようとすると肩に痛みが、その瞬間金縛りが解けて眼が覚めました。
あまりの恐ろしさに動悸が激しく、今のは夢か、それとも現(うつつ)かと。
 払いのけた右手に異様さを感じて明りをつけて見るとうっすらと血の跡が。これは式神の血か?  僕の左肩には少し傷跡が……自分の手で!
「今に異様なものは何でござりましょうか」供のものが言った。「先の世からの異形のものであろう」。
 門がすっとひとりでに開くと男はそのまますたすたと屋敷内に入って行きました。
後に京の都に出没する鬼、妖怪、怨霊を鎮めた陰陽師 阿倍清明であったと思われる。

 先日、清明誕生秘話に惹かれて大阪市阿倍野区にある阿倍晴明神社にお参りし、付近を散策したばかりでした。神社の建っている辺りには清明の屋敷があったのである。
 紙札、これは式札と呼ばれるもので術師が携帯していて陰陽師の命令の下で、様々な不思議な現象を起こすとされる霊的存在で式神と言われる。
 安倍晴明は人の見えない闇の世界を自由に操り未来も予測し国家安泰を図ったと言う。

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