◆短編小説・・・
過去の旅人【n5】


    
  ●都 大 路

 夕べは夢の中に鮮やかな衣装を着て、都大路を歩いている女性のうしろ姿を見たのです。

 京の都の戌亥の方角には人々に古くから慕われている愛宕山がある。この山にも日が沈み夜の帳が下りた。
 子の刻も過ぎると人々も深い眠りに。都大路も人っ子一人見当たらない。
やがて「闇の世界」が訪れる。人間の恐怖と欲望、人の心の奥の闇の部分が現れる。 この時代の都には多くの妖怪、魑魅魍魎が徘徊していた。

 ここ、朱雀大路を僕の前を妙齢の娘が、笠の周りをからむしの繊維でTUBOSTYLE.JPEG織った薄布を垂らした虫垂(むしたれ)で顔を隠し、足には脚絆を巻き、草履を履いて静かに歩いている。
 この時刻になると、通りには妖怪があちらこちらから現れ、我が物顔に歩き回っている。 一匹の妖怪が娘にまとわり付く。
 すると、なんと振り向いた娘の顔が夜叉の如く、恐ろしい顔でその妖怪に食らい付く。
 あっという間の出来事に僕は防火用水の横に隠れ、小さくなって見ていた。
その後娘は何事も無くすたすたと、こちらを背中に朱雀門に向けて歩いていった。
 今の娘子はどちらの貴族に使える女房だったのだろうか。

 夜の帳も空けて卯の方角にある東山36峰が薄明るくなると「光の世界」がこの都にも訪れる。
人々のざわめきが聞こえてくる。
我に帰った僕は、娘が歩いて行った朱雀門を背に未来に向かって歩いていた。

 これはフイクションですかって?
じつは・・・・(イヤ、)私にも分からないんです。
人生過去があって現在があるのです。そして現在があって未来が展望できるのです。
現在の世の中にも人の顔をした妖怪がうろついています。
じつは・・・・かく言う私も?

カラムシの繊維とは、http://www.zendoji.jp/shuchiku-karamushi.htm
平安時代の女性、 http://www.bb.em-net.ne.jp/~maccafushigi/mac/3.htm
また、女子の旅装として壺装束や市女笠(いちめがさ)、むしのたれぎぬなどの風俗もありました。

東山36峰は、京都市の東側を大文字山(466m)、如意ヶ岳(474m)などのなだらかな山々が続く。

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